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トヨタ自動車のお膝元で・・・

自治区の土地が大金生んで、住民対立が始まった!


トヨタ自動車のお膝元、愛知県豊田市のはずれ、人影もまばらな牧歌的な集落で、大金をめぐる騒動が起きている。トヨタも苦しむ不景気をよそに、共同名義の土地が大金を生み、それを分配しようというのだ。景気のいい話のはずなのだが、お金がからむと人間関係もすさむようで―――。


 歩いても歩いても畑ばかり。集落を一軒一軒訪ねると、多くの住民が、「誰から聞いた?」と警戒し、口を閉ざした。それでも時間をかけて取材を進めるうちに、ポッリポツリと話をしてくれる人が増えてきた。


「大正時代からの払い下げの土地がカネをもたらしたんだ。それをこつそり分けようとするから、大騒ぎだよ」

50代の男性)「亡くなったお義母さんは、『動けるうちにお金があれば使えるが』 って、早くお金がもらえるように『ナンマンダー、ナンマンダー』と仏様に祈ってたんですよ。もらえてたら、すごく喜んだのに」(40代の女性)


 愛知県豊田市の北北西にある八草町地区は、約486f(東京ドーム釣103個分) の広大な土地に、わずか285世帯、652人が住む。愛知環状鉄道とリニモ (愛知高速交通束部丘陵線) の乗り継ぎ駅や、愛知工業大学があり、2005年の愛知万博の跡地にできた「愛・地球博記念公園」にも近いが、それ以外は山と田畑が広がる田舎町だ。


 この静かな町で、何が起きているのか。 八草自治区の粕谷睦区長や八草合有土地管理組合の田原勝利理事長らの話によると、こういうことだ。


 1913(大正2)年、自治区が国から広大な土地の払い下げを受け、当時の住民75人が共同で名義人になつた。「ばらばらに分かれてるんで詳しい面積はわからんが、通説では東に20万坪、西に40万坪あるといわれている」(田原理事長)


 合計60万坪というと、約200fにも及ぶ土地だ。当時は薪を切るなどしか使い道がない土地だったというが、平成になるころから、「宝」に化けた。


 はじめは鉱物だつた。山の土がガラスの原料となる珪砂を多く含んでいることがわかり、四つの鉱山会社が土地を借りて採掘を始め、毎年数千万円の借地料が入つてきた。

 土地も売れた。市の水道施設用地として売って釣3億円、県企業庁の施設用地としても約10億円が入った。愛知万博にからむ開発などでも土地が売れたという。

 共同名義の土地(合有地)を管理する八草合有土地管理組合ができたのは89年。組合には一時、20億円を超すカネがたまり、年に一度、1月に行われる組合の総会では、組合員から、「そろそろ分けてほしい」 という声が出た。だが、分け方などでまとまらず、「公共のものに使おう」 ということで合意。2000年に地区内の八神社の改修に91千万円もの大金を寄付した。

 だが、またカネはたまり、現在は約17億円ある。「カネをそのまま持っててもしょうがない。分けよう」という話は繰り返し出たというが、問題があった。

 田原理事長が言う。「合有地の名義は、現在57人になつとります。でも、時代とともに入は増え、もともと名義人であった本家からの分家を含めると、組合員は114人になる。本家だけでなく、分家の入も名義人と同じ権利がほしい。名義が分かれていると、土地を扱いにくくもある。それで、カネの分配は今後の研究として、とりあえず、名義を組合でまとめることにした」

 昨年11月から、組合の指定した人に名義をまとめるため、名義を返上してもらい、返上した名義人には1千万円を渡し始めたという。

 実際に1千万円という大金が、こつそりとだが近隣に出回り始めると、住民の間に静かな対立が生じてきた。

 名義人ではない、ある組合員の男性は憤って話す。「名義人にだけカネを払う根拠はない。八草のものなら、八草の人みんなに払わないといけないのにおかしいでしょ。納得できん」

トヨタが土地を百億円で買う?

 やはり名義人ではない60代の女性も、こう言う。「立派な家に住んどるくせに、お金が入ったことをちょこちょこ自慢してくるのがいる。腹立つから、あんまり聞かんようにしとる」

 また、名義人の40代の男性も冷静な田調でこう話す。「八草のカネをみんなで分けたって、税金で取られる。よくよく考えれば国が得するだけ。みんなのために使ったほうがいいから、これはいい話と思えんわ」

 このほかにも、「この世には、お金がない人が何千万人もいるて。お金をもらつたことがばれたらもめる。黙っとれって」 と口を閉ざす高齢の女性もいれば、「昨年の暮れや今年の正月はやたら静かだつた。女房と家で、『お金が入ったから、どっか旅行にでも行ってるんじゃないか』 って話してましたよ」 と恨み節を口にする男性もいる。

 「あの家がトヨタの高級車を買ったのは、土地のカネが入ったからだと思う」 などと噂話をささやく人もいた。静かな田舎町の裏には、カネの話が充満していた。

 また、八草町に近年来たという転入者たちは、今回の取材によって土地とカネの問題を知り、「区費は納めているけど、土地の組合なんて開いたことがなかった」 と口々に言った。古い住民が新しい住民を部外者として扱っていることもわかったのだ。

 さらに、こんな詰もある。ある地元の50代の男性が、声をひそめて言う。 「トヨタ自動車が研究所を造るために10万坪の土地を100億円で買うという、とんでもない話まである。実現すれば、これから始まる分配金のケタが増える」

 この情報は、ほかにも、「この不景気で中断してるらしいが、トヨタがテストコースを造るために土地を高額で買うらしい」 などと複数の住民が口にした。

 トヨタと話し合いを進めているという粕谷区長に尋ねると、こう断言した。「トヨタの話は今は何とも言えんけど、まず間違いない。中断ではなく、延期ということだろう。八草の人は先祖に感謝せんといかん。自治区にカネがいくら入るのかって? それは聞いちゃいかんがな〜(笑い)」

 今年の組合の総会125日に開かれる。組合員の意見は、まとまるのだろうか。   本誌・成田光平 

                                         週刊朝日2010年1月30日記事全文

メーテレ名古屋テレビ報道動画「平成埋蔵金騒動」
■平成埋蔵金騒動 その1
■平成埋蔵金騒動 その2
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